酒蔵は、東北一の鮭川で知られる請戸(うけど)川の河口に開けた請戸港を眼前に、左側には漁港、
右側には白い砂浜が控えます。歩いて15歩程の堤防を駆け上がると、太平洋が広がり、
はるか洋上を渡ってきた風とすぐ出会えます。
漁業、海運のまちで知られたこの請戸に、酒蔵を構えたのが江戸時代末期の天保年間。以来、港町としての気候風土が、
酒を醸してきました。
創業以来、漁師さんらと共に歩んできた壽(磐城)。酒銘も、縁起を重んじ、皆で祝う−「壽く(ことほぐ)」とされ、
祝の酒、暮らしの酒として溶け込んでいます。
「酒になったが?」と漁師さんが使う言葉があります。漁師さんらは、その日獲れた魚を市場に出します。
その売上が20万円以上になると、漁協組合から大漁祝として壽が届きます。そこで、ここ請戸では漁の具合を尋ねるのに、
さっきの言葉が漁師さんらであいさつとして交わされています。
当蔵でも「今日は酒がでたな!」という日は、大漁の日。その季節季節の魚と漁と、
漁師さんらの日々の暮らしと共に歩んだこの百年余り。地の酒として、海までの実際の距離より、心はずっと海のそばにいたい。
田舎を大切に。そんな酒蔵です。
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